壁面収納を生かした900万円のマンションのリノベーションプランと見積費用

開放的な間取りにしてほしいというお問い合わせから始まり、開放的な間取りを考えながらLDKに動きのある壁面収納を設けるなど工事計画を下記にてまとめています。また、各工事の見積金額と内訳も記載しているのでこれからリノベーション(リフォーム)計画がある方は参考にしてください。

ココでは、【参考事例】のように画像などの公開は許可をいただけませんでしたが、プランや見積金額など許可をいただいた内容をまとめています

リノベーションの概要とプラン

マンション
家族構成 御夫婦とお子様一人
要望
  • 仕切られた壁をなくし開放的なLDKにしたい
  • スッキリとオシャレな生活空間にしてほしい
  • WIC(ウォークインクローゼット)を設ける
  • 将来の子供部屋を一つ設ける
  • 内装にこだわりがある

 

リノベーション費用 約900万円
工期 53日

開放的な間取りを前提としたリノベーションプランを考える

最初にお問い合わせをいただいた時、「間仕切りをなくして開放的にしたい」というご要望でしたので、和室をなくしてLDKを広くするリフォームととらえていました。

マンションの現状図面を拝見しラーメン構造なので和室をなくしてLDKを広くするのに特に問題はないだろうと考えていました。

プランを作成するにあたって要望をさらに具体的にしていこうとメールでやり取りしていました。クライアント様に質問し答えてもらうというのを2回ほど繰り返した後、どうもLDKを広くするだけではないというのが分かり、こだわりも強いというのが感じてきました。

しかし、それをどのような言葉でそれを表現したらいいのか分からないというのがメールからすごく伝わってきました。

会話で伝えるほうが、もっとご要望を掘り下げることができるだろうと思い、電話でやり取りをしたいことを伝えました。

OKの返事をいただいたので空いている時間に電話をし、色々と話をすると、部分的なリフォームではなく全体的に間取りや内装を変えるリノベーションを希望されていることが分かりました。
お話をし内装にこすごくこだわっているのが分かりましたが、それをどのように伝えたらいいのか悩んでいるように感じたので、まずはラフプランをもとに具体的にしていくのがベストと思いご要望をまとめたプランを作成することを伝えました。

最終的には、WIC(ウォークインクローゼット)を設けたりキッチンを新しくしましたが、この段階では流用する形をとっていました。

変更したのは、LDKの間取りと洗面室の隣の和室を寝室にしたくらいでしです。ただLDKの内装の素材には意識し床は、冬は冷えにくく夏は素足が快適に感じる無垢のフローリング。壁はジョリパッドなどきれいな壁面というよりザラっと仕上げてはどうかと考えました。

洗面室やトイレ・浴室など水廻りはマンションなので移動はできないものと考えたほうがいいと伝えました。

この段階でのラフプランは、全体的に間取りやデザインを変更するリノベーションとは違い、どちらかというと部分的なリフォームという感じのプラン。

このプランをクライアント様に見せたところ、物足りないということが分かりました。この電話でのやり取りは奥様と行っていましたが、ご主人と奥様と私で直に打ち合わせをしたいと言われたのでクライアント様のお宅に伺うことに決まりました。

お会いし打ち合わせをするまでに少しでもプランを具体的にしようとキッチンを対面式にしWIC(ウォークインクローゼット)やダイニングに壁面収納を盛り込んだプランを作成しました。

クライアント様は30代と若く、小さい女の子が常に奥様と一緒に動いていました。オシャレなソファに花柄のクッションカバー。

ガラス性のダイニングテーブルに感じのいい観葉植物などインテリアのセンスには感心。内装にこだわりがあるのも納得。

WICや対面式のキッチンなどを新たに盛り込み無垢のフローリングや壁面収納を提案したLDKの内装プランはすごく気に入られました。

これによって対面式のキッチンにすることが決定。

この段階では、キッチンの品番を決めるなど具体的には決まっていません。奥行と横幅など大きさが決まっているくらいです。

メーカーのシステムキッチンを希望している場合にはTOTOやLIXILなどやり取りしているプランナーさんに連絡しキッチンや予算などから機器を具体的に絞りこんでいく流れをとっています。候補がいくつか決まればシュールームなどを見学しプランに記載している大きさに合うキッチンを選ぶという方向性です。

オーダーメイドのキッチンの場合には、クライアント様がお住まいの近くにあるオーダーメイドキッチンの制作を専門としている会社(プランナー)に問い合わせプランを具体的にしていきます。(水廻り設備を決める際、ショールーム回りは私も立ち会うことがあります)

浴室は手を加えず、トイレと洗面室の内装をやり変える。また既存の洗面化粧台を撤去し造作の洗面台を設置。それと、リビングにもテレビやインテリアの小物をおける壁面収納を設けることで決まりました。

この壁面収納は最終的に下記にあるパースのような形・デザインに決まりましたが、この段階では、まだ壁面収納を取り付けるというだけで、具体的には何も決まっていません。

概算見積

クライアント様との打ち合わせ後、要望をまとめてプラン作成に集中しました。今回は、大きな間取り変更はそれほど多くはない。

代わりに造作の壁面収納や内装の素材。キッチン・洗面台などに大きく金額がかかるだろうなと思い、予算の900万円を超えるかもしれないけど、それほど大きく減額するほどまでには至らないだろうと考えていました。

リノベーション費用を具体的にするためには、まず複数の施工会社に見積を依頼するための図面を作成。

作成後、クライアント様にも確認していただき、いくつか修正した後、問題なしの返事をいただいたので、4社の施工会社に概算見積用の図面を送付。この段階ではクライアント様の住所や名前は伏せた状態です。

1週間ほどして4社からの概算見積書が揃い一番安い金額で約1070万円。高い金額で約1160万円。

予算を大幅にオーバーしたこの値段には驚きました。

見積を行った各施工会社さんと話、値段が高い理由は無垢のフローリングと壁面収納ということが分かりました。とは言え、ここまで費用がかかるとは考えてもいませんでした。

無垢材について

家具やフローリングなどにこだわりのある方は、この「無垢材」という言葉を目にしたことがあるかと思います。

無垢材というのは、木を伐採した後、それを製材してできたものを言います。ベニヤ・コンパネなど貼り物ではありません。魅力は、木の雰囲気を醸し出し使うことによって深みが出てくるところ。しかし費用は高くなります。

無垢材の壁面収納にはすごく喜んでいたので、変更せざるをえないということは伝えにくく、挽回できるかは、設計者の腕によるため気を取り直しました。

クライアント様には、「無垢材の壁面収納を超えるプランをまとめます」と伝え施工会社さんに予算900万円に間に合わすため、仕上げ材について色々と協議しました。

話し合った結果、壁面収納の仕上げはメラミンに決定。材質では、メラミンは無垢材にはかなわないデザインを優先したプランを考えました。色々と考え、基本的に白色をベースに少し赤や青など有彩色を部分的に使い、動きのある壁面収納にするという方向性でいくことにしました。

2日かけて、考えを図面にまとめ、ホワイトをベースにし、青や赤色を部分的に配色。

また、所々に寝室とをアクリル板(半透明シート貼り)でつなぐといったアイデアも盛り込むことにしました。(室内パースは下記に載せています。)

図面とパースを仕上げて、クライアント様に確認していただきました。最初の案よりもオシャレで素敵という返事が帰ってきました。

前回の案を挽回するのは非常に難しい。できた時は、本当にうれしく、緊張が和らぎ少しの間、全身の力が抜けるほどホっとした気分になります。
プランはできたのはいいけど、肝心の費用は?それを知るため、図面を再度まとめて、改めて概算見積をお願いしました。4日ほどし見積書などがそろいました。

当サイトを通しクライアント様と施工会社がやり取りし、LDKで無垢のサクラ材のフローリングや、壁を温かみを感じさせ調湿性がある漆喰を提案し、概算見積では950万円の施工会社が候補としてあげられました。

また会社の信頼性などから最も安かった920万円の施工会社の2社に絞込み。

正式見積と施工会社の最終絞込み

当サイト(リノベーション・リフォーム見積お役立ち隊)の流れでは概算見積の後、絞り込んだ施工会社の現地調査へと進みます。この現地調査では設計図面と現場との食い違いや実際に工事にできるかなど施工会社の社長さんや担当者の方が細かくチェックします。

プランが決まるまでは、当サイトが主導し工事計画を進めていましたが、この現地調査から施工会社さんを中心に工事計画が進むことになります。

現状の状態をチェックし工事ができないと判明した場合は、プランを変更し再度、変更プランと見積書をクライアント様に確認していただくことになります。

(マンションでは水廻りの移動計画がある案件では、工事が難しいことからプラン変更となるケースがあります。)

当案件では、工事できないといったことはなかったので、プラン通りに進むことになりました。

現地調査の時、知りたい事や分からない事などあれば遠慮なく質問してください。

(施工会社さんに質問する内容をあらかじめ考えておくことをおすすめします。)

質問に対しどのような答えを返してくれるのか。面倒そうに受け答えしていないかなど最終的に1社に絞り込む時の重要な判断材料となります。

現地調査が終われば、だいたい1週間程度で正式見積書ができあがります。

そして、施工会社の社長さん(担当者)は正式見積をもって改めてクライアント様のご自宅に訪れることになります。

正式見積書は郵送で送ってもらえばいいのでは?と思う方もいらっしゃいます。しかし、肝心なのは正式見積書の内訳の説明です。リノベーション(リフォーム)内容がきちんと見積書に反映されているかを確認する重要な作業です。

施工会社によっては専門用語など噛み砕いて説明してくれる会社と、そうでない会社があります。もし、説明が分かりにくい場合は遠慮せずにどんどん質問してください。回答内容や応対の態度なども、工事を依頼するか重要な基準となります。

2社とも予算内の900万円以内の金額。そのため、会社の信頼性であったり、社長さん(担当者さん)の人間性、実績などから工事の依頼先を決めることになります。

最終的に漆喰やサクラ材のフローリングを提案してくれた会社に決まりました。

リノベーション後の室内パース

下記にて、当案件で最もこだわった壁面収納部と玄関のパースを載せています。

LDK内の壁面収納部のパース

LDKから見た壁面収納部 寝室からみた壁面収納部

アクリル板は、LDK側から見ると壁面収納に埋まっているように見せています。寝室からは壁をくり抜き繋がりを持たせながらインテリアとしても生かせるよう考えてプランしました。

壁面収納部は扉によって開閉することができ、マグネットキャッチ(プッシュオープンタイプ)のためつまみはありません。

玄関のパース(モザイクタイル貼り)


玄関にはトイレとの間仕切りとして斜めに走った壁によって仕切られています。その斜めに走った壁にはモザイクタイルを貼っています。

「下駄箱との関連性やトイレ内部の内装を上手くデザインするためには」を考えながら設計しました。

リノベーションの費用【各工事の見積金額と内訳】

以下、解体工事を含め完成までに至った工事の見積金額と内訳を記載しています。

解体・撤去工事

解体・撤去工事の見積費用 約730,000円

建具・木工事

壁の下地や間仕切り扉(素材と取り付け費用)、フローリング(素材と取り付け費用)がこの工事に含まれています。

建具・木工事の見積費用 約2,420,000円

左官・タイル工事

左官・タイル工事の見積費用 約470,000円

造作家具工事

造作家具(オーダーメイド)は壁面収納などを意味しています。

壁面収納には、今回のような造作(オーダーメイド)と既製品があります。造作と既製品の大きな違いは、造作が棚の寸法や色を自由に決められるのに対し、既製品は決まっている大きさ(色)の棚(パーツ)を組み合わせるところにあります。

基本的に価格は既製品のほうが安く造作(オーダーメイド)は高くなります。

造作家具工事の見積費用 約2,150,000円

塗装・漆喰工事

この案件では、LDKが漆喰塗りで、その他の部屋は塗装仕上げです。漆喰仕上げの㎡単価は、約4000円(材料費施工費共)。塗装仕上げの㎡単価は約1000円と4倍近く差が開きます。漆喰はツルっとつやのある仕上げの他にパターンをつけることも可能です。パターンをつける場合はDIYでも可能ですがツルッと仕上げたいなら職人さんの腕が必要です。この案件ではパターンをつけています。

塗装・漆喰工事の見積費用 約780,000円

内装工事

木工事で壁下地を起こした後、ボードを貼らなければいけません。内装工事には天井・壁のボードと施工費が下記になります。

内装工事の見積費用 約530,000円

住設工事

この工事には、キッチンや洗面台が含まれています。材料代と施工費共。

内装工事の見積費用 約830,000円

電気・ガス・水道工事

電気の配線・ガス管や上下水道管の配管。

内装工事の見積費用 約560,000円

諸経費

諸経費の見積費用 約570,000円

トータルの費用(税抜き)

当リノベーションのトータルの見積費用 約9,040,000円

まとめ

壁面収納などオーダーメイドで作る場合には、使用する材料によって大きく工事費用が変わってきます。

木材の費用の大小を大きくまとめると、最も費用がかかるのが無垢材です。次に集成材。そしてメラミンが来てポリが最も安い。

無垢材が最も値段が高いと記載していますが、無垢材の中にも色々あります。

例えば加工しやすい(柔らかい)杉や赤松などは安く、逆に固くて加工しにくいウォールナットやチークなどは値段が高くなります。

カラーによってインテリアを全面に出したい場合は、メラミンやポリ化粧合板がいいでしょう。

またシナ合板の塗装仕上げも費用を抑えられる上にきれいに仕上げることができます。

アンティーク風に。又は木材の風合いを醸し出す仕上げにしたいなど「木」にこだわりがある方は、無垢がおすすめです。天然木突板や集成材もありますが、使うことによって深みがでるのは、無垢材です。

しかし、値段が高くなるため予算は多めに考えておくのがいいでしょう。

この案件の壁面収納は壁の仕上げとの組み合わせによって完成するタイプです。またアクリル板も組み合わされるという手間がかかる工事です。

このようなタイプは、職人の腕や施工会社の指示レベルに仕上げの完成度が大きく左右されます。

デザイン重視の設計事務所が考えるプランを工事している工務店やリフォーム会社は手間がかかる細かい工事でも上手く収めることができ施工レベルが高い。そのため仕上がりが非常にきれいです。

逆に、手間がかかるような工事をあまり得意としない工務店やリフォーム会社は粗が目立つことがあります。

工事金額は、施工レベルが高い会社ほど高額です。

リノベーション(リフォーム)費用は施工会社を決める重要な要素ではありますが、手間がかかるプランの場合は慎重に施工会社を選ぶ必要があります。